長編小説「花蓮〜ファーレン〜」
長緒鬼無里 著

わずか八歳で即位した皇帝

三代目魏王 曹芳(そうほう)は、わずか八歳で皇位についた幼帝。幼い彼を利用し、私腹を肥やそうとする者たちに囲まれて日々を過ごす中、唯一の心の支えは、幼少期からともに学び、育ってきた花蓮(ファーレン)だった。年頃になった曹芳は、花蓮を皇后にと望むが、義理の母である皇太后によって阻止され、花蓮は曹芳の妾に身を落とすことになる。

そんなある日、東の海に浮かぶ小国倭国から、一人の青年 男鹿(おが)がやってくる。彼は愛する人の立場に近付くために、倭国第二の大国、狗奴国の王になることを認めて欲しいという。初めはそんな男鹿のことを好意的に見ていた曹芳だったが、ある日皇太后が勝手に、花蓮を男鹿の妾にしてしまう。

花蓮と曹芳

激しく衝突しながらも、互いを理解してゆく男たち

ともに過ごすうちに、徐々に男鹿に惹かれていく花蓮。しばらくして、再び花蓮を手元に取り戻した曹芳だったが、彼女の男鹿へ対する思いを知り、今度は嫉妬に苦しむことになる。一方の男鹿も、政治において冷酷な判断を下す曹芳に反感を持つこともあった。

理解し合うのは難しいと思われた二人だったが、男鹿の人間性に触れるにつれ、曹芳は一目置くようになっていく。また男鹿も、曹芳が大きな覚悟を持って玉座についていることを知り、彼に対して尊敬の念を抱くようになる。

だが、そんな彼らの周辺に、不穏な空気が漂い始めた。

曹芳と男鹿

古代中国における、女性の生き方とは

優れた知性を持ちながらも、妾として男たちに翻弄される人生を歩んできた花蓮。その立場をも失った時、思いがけず彼女に医師として生きる道が開かれる。

しかし、その道へ導いてくれた皇后は、曹芳や男鹿の運命までをも巻き込み、命懸けの覇権争いに身を投じようとしていた。

「ラスト・シャーマン」の登場人物男鹿が魏へ渡り、帰国するまでの三年間を描く外伝。