長編小説「白き覇王の軌跡」
長緒鬼無里 著

雪深い国で生まれた覇夜斗

一年の半分近くを雪に閉ざされた雪国で生まれ育った覇夜斗(はやと)は、神官である祖父と、体の弱い母と、貧しいながらも静かに暮らしていた。そんなある日、彼の元へ、出雲から使者がやってくる。

使者は、覇夜斗が亡くなった出雲王の落胤で、彼を王として迎えにきたという。一度は拒否した覇夜斗だったが、自国の民に圧力をかけると脅され、渋々出雲へ旅立った。

故郷での覇夜斗縮小

憎しみから愛情へ

出雲王となった覇夜斗は、不本意ながらも国が抱える問題に直面していく中で、王としての自覚が、少しずつ芽生えていく。

異母兄妹の夕月に対しては、当初、同じ血を引きながら、捨て置かれた自分に比べ、父の元で恵まれた生活を送ってきた彼女に憎しみを抱いていた。だが、夕月が媛巫女として背負ってきた責任と、誰にも言えない出生の秘密を抱えていることを知り、彼女へ対する思いも、徐々に変化していく。

はやととゆづき縮小

未知なる流行り病との戦い

そんなある日、出雲の西の村で、奇妙な病が流行し始める。「美人病」と呼ばれるその病の真相を探ろうと、覇夜斗は魏の医師が移住しているという渡来人の村を訪ねていく。医師の助言もあり、病の正体に辿り着けた覇夜斗だったが、不治の病に倒れた人々を前に、王として何もできない自分の無力さを知る。

責任とやりがい、そして絶望。悩みながらも王として成長していく、覇夜斗が邪馬台国の皇子、月読に出会うまでの青年期を描く。

月読とハヤト3色